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年期有給休暇の取扱について

2014-09-16

 

社会保険労務士丸山事務所 (町田社会保険労務士) 社労士インフォメーション

 

年期有給休暇の取扱について

 

先日、今まで一日も有給休暇を取得したことがないという勤続三年目の従業員さんが、退職に際して会社に年次有給休暇を申請したところ、全て消化されているとの回答があったが問題ではないのか?との相談がありました。

 

会社の言い分は、年末年始や研修で全て消化したとのことでした。

 

これまでの相談の内容は開示していませんが、年次有給休暇の運用等は会社にとっても重要な問題ですので、果たしてこのような主張ができるのかを、今回は考えてみたいと思います。

 

先ずは付与日数ですが、労働基準法39条には付与日数が法定されています。

年次有給休暇は、雇入れの日から6カ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を付与しなければなりません。その後は、継続勤務年数1年ごとに一定日数を加算した日数となりますが、一般の労働者の場合は次のとおりとなります。

継続勤務年数

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5以上

付与日数

10

11

12

14

16

18

20

 

この従業員さんは現在3年目の勤務という事ですので、今年の有給休暇は2.5の所に該当し付与日数は12日となります。昨年も有給休暇を取得(※1)していないのであれば11日が加算されますので現在の有給休暇の日数の合計は23日あることになります。

(※1)年次休暇を使用しなかった場合、年次有給休暇の請求権の時効は、2年です(労働基準法第115条)。

 

上記のことから、一般的には23日有給休暇は残っているものと考えられます。

 

有給休暇の例外的な取り扱いに関して(計画付与)

労働基準法39条6項では年次有給休暇の計画的付与制度という制度が定められています。

「・・・・・これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる」とされています。

 

計画付与の前年からの繰り越し日数の取扱に関して

前年度取得されずに次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越された年次有給休暇を含めて、5日を超える部分を計画的付与の対象とすることができるとされています。

 

今回の事案に当てはめ(限計画付与で可能な有給休暇を全て消化すると仮定します)

 

入社から6月経過した時点

10日の年次有給休暇が付与されます。

計画付与が実施された場合、5日は計画付与で5日は自由に使える年次有給休暇です。

入社から1年6月経過した時点

新たに11日の年次有給休暇が付与されます。

昨年の繰り越し分5日と新たに付与される11日で、16日の年次有給休暇となります。

計画付与実施された場合、11日は計画付与で5日は自由に使える年次有給休暇です。

 

入社から2年6月経過した時点

新たに12日の年次有給休暇が付与されます。

昨年の繰り越し分5日と新たに付与される12日で、17日の年次有給休暇となります。

計画付与実施された場合、12日は計画付与で5日は自由に使える年次有給休暇です。

 

仮に計画付与が適法に行われた場合には勤続3年の人では計画付与は12日でその他に5日は自由に使用できる年次有給休暇があるはずで、全くないとの会社の主張には無理があります。

 

年次有給休暇の計画的付与制度の導入に関して

年次有給休暇の計画的付与制度の導入には、就業規則による規定と労使協定の締結が必要です。

 

就業規則による規定

年次有給休暇の計画的付与制度を導入する場合

就業規則に「5日を超えて付与した年次有給休暇については、従業員の過半数を代表する者との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」などのように定めることが必要になります。

 

労使協定の締結

実際に計画的付与を行う場合には、就業規則の定めるところにより、従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があり、労使協定で定める項目は次のとおりです。

 

・計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)

・対象となる年次有給休暇の日数

・計画的付与の具体的な方法

・対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い

・計画的付与日の変更

 

この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありませんが労働基準法106条(法令等の周知義務)により従業員に周知しなければなりません。

就業規則や協定等は周知されていななければそもそも効力は発生しませんので、計画付与に関しても実施できないことになります。

 

業務上必要な研修に年次有給休暇を使用できるか?

この場合、研修が任意でおこなわれるものであるか?、強制的におこなわれるものであるか?を検証する必要があります。

分かり易い判断基準としては

その研修に参加しなかった場合、参加しない従業員に減給や人事考課の評価が下がる等の不利益があるかで判断できます。

仮に、研修に参加しない場合に不利益になるのであれば、その研修は業務(労働時間)であると判断できますので有給休暇の取得等の問題は発生しません。

 

会社が年次有給休暇を勝手に使用できるか

年次有給休暇は従業員に与えられた権利であり、時季(時期)指定権の行使は従業員に委ねられていますので、会社が勝手(従業員の同意があるものは除いて)に消化することはできないものと解されます。

 

これらのことを考慮すると、今回のように有給休暇が全く残っていないという会社の主張には無理があると思われます。

 

このようなに、退職前の従業員ともめた場合、従業員は就業規則等の周知がされていない。労働基準法106条違反、有給休暇を取得できない。労働基準法39条違反等で労働基準法104条(監督機関に対する申告)することも考えられ、仮に労働基準法違反となれば会社は大きなダメージを受けることになります。

 

このようなことにならないように、日頃から有給休暇等も含め法律で定められている事項の運用に当たっては確認をすることをお勧めします。

 

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