労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

平成23年及び平成24年の賃金不払い残業の状況

 

賃金不払残業(サービス残業)是正結果の概要(平成23年度監督指導結果)

平成23年4月から平成24年3月までの1年間に、残業に対する割増賃金が不払いになっているとして、労働基準法違反で是正指導した事案のうち、1企業当たり100万円

以上の割増賃金が支払われた事案の状況は、以下のとおりです。

【是正企業数】 1,312企業 (前年比 74企業の減)

【支払われた割増賃金合計額】 145億9,957万円 (同 22億7,599万円の増)

【対象労働者数】 11万7,002人 (同 1,771人の増)

【1企業での最高支払額】 26億8,844万円(建設業)

 

 賃金不払残業(サービス残業)是正結果の概要(平成24年度監督指導結果)

平成24年5月から平成25年3月までの1年間に、残業に対する割増賃金が不払になっているとして、労働基準法違反で是正指導した事案のうち、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案の状況は、以下のとおりです。

【是正企業数】 1,277企業 (前年比 35企業の減)

【支払われた割増賃金合計額】 104億5,693万円 (同 41億4,264万円の減)

【対象労働者数】 10万2,379人 (同 14,623人の減)

【1企業での最高支払額】 5億408万円(卸売業)

 

 これらの状況から会社のリスクを低減させるためには厚生労働省が示している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」がどのようなことを定めているかを正確に理解する必要があります。

 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」では労働時間の記録や方法に関して記載されています。

始業・終業時刻の確認・記録

使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。

労働時間の適正な把握を行うためには、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があります。

 

始業時刻や終業時刻を確認・記録する原則的な方法

1.「使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること」とは

「自ら現認する」とは、使用者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、直接始業時刻や終業時刻を確認することです。

なお、確認した始業時刻や終業時刻については、該当労働者からも確認することが望ましいものとされています。

 2.「タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること」とは

タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基本情報とし、必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突き合わせることにより確認し、記録します。

この、タイムカード、ICカード等には、IDカード、パソコン入力等が含まれます。

自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記2の方法ではなく、自己申告制により行わざるを得ない場合、以下の措置を講ずる必要があります。

 自己申告制を導入する前にその対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

 この場合、労働者に対して説明すべき事項としては、基準で示したもののほか、自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な取扱いが行われることがないこと、などがあります。

自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。

 この場合、労働者に対して説明すべき事項としては、基準で示したもののほか、自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な取扱いが行われることがないこと、などがあります。

 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。

 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

この場合、労働時間の適正な申告を阻害する措置としては、基準で示したも以外に、職場単位ごとの割増賃金に係る予算枠や時間外労働の目安時間が設定されている場合に、その時間を超える時間外労働を行った際に賞与を減額するなど不利益な取扱いをしているものがあります。

 3.労働時間の記録に関する書類の保存

労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。

1.労働基準法第109条においては、「その他労働関係に関する重要な書類」について保存義務を課していますが、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類もこれに該当し、3年間保存しなければならないことを明らかにしたものです。

具体的には、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書、労働者が自ら労働時間を記録した報告書などが該当します。

なお、保存期間である3年間の起算点は、それらの書類ごとに最後の記載がなされたとなります。

2.労働基準法第108条において、使用者は賃金台帳を作成しなければならないこととされていますが、その記載事項としては、労働日数、労働時間数、残業時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数が掲げられています。

賃金未払いとされないために使用者が講ずべき措置を正確に理解する必要があります。