管理監督者をめぐる民事裁判例

労使関係が順調な場合は、表面化もしませんし、「これまでも大丈夫だった」と思われるかもしれませんが、実際には管理監督者性が否定された多くの裁判例があります。

サンド事件(大阪地裁判決 昭和58年7月12日)

争点:時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:課長(生産工場)

●工場内の人事に関与することがあっても独自の決定権はなかった。

●勤務時間の拘束を受けており、自由裁量の余地はなかった。

●会社の利益を代表して工場の事務を処理するような職務内容・裁量権限・待遇を与えられていかった。

レストラン『ビュッフェ』事件(大阪地裁判決 昭和61年7月30日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:店長(ファミリーレストラン)

●店長としてコック、ウエイター等の従業員を統括し、採用にも一部関与し、店長手当の支給を受けていたが、社員の労働条件は経営者が決定していた。

●店舗の営業時間に拘束され、出退勤の自由はなかった。

●店長の職務の他にコック、ウエイター、レジ、掃除等全般に及んでいたことから店舗の経営者と一体的な立場にあるとはいえなかった。

彌栄自動車事件(京都地裁判決 平成4年2月4日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:係長補佐・係長(タクシー営業所)

●乗務員の出勤点呼、配車、苦情や事故対応などを行っていたが、懲戒処分や示談等の最終的な権限はなかった

●自らの業務内容、出退社時刻等について裁量権がなかった

●会社の営業方針全般を決定する営業会議への出席を求められなかった

国民金融公庫事件(東京地裁判決 平成7年9月25日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:業務役(支店)

●関係職員の超過勤務命令について総務課長とともに支店長に具申する権限があったが、経営方針の決定や労務管理上の指揮権限について経営者と一体的な立場にあったとまではいえなかった。

●出退勤の管理は一般職員と同様であった。

インターパシフィック事件  (大阪地裁判決 平成8年9月6日)

争点:時間外労働及び休日労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:ベーカリー部門及び喫茶部門の店長

● 売上金の管理、アルバイトの採用の権限がなかった。

● 勤務時間の定めがあり、毎日タイムカードに打刻していた。

● 通常の従業員としての賃金以外の手当は全く支払われていなかった。

株式会社ほるぷ事件  (東京地裁判決 平成9年8月1日)

争点:時間外労働及び休日労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:書籍等の訪問販売を行う支店の販売主任

● 支店営業方針を決定する権限や具体的な支店の販売計画等に関して独自に同支店の各課長に対して指揮命令を行う権限をもっていなかった。

● タイムカードにより厳格な勤怠管理を受けており、自己の勤務時間について自由裁量を有していなかった。

キャスコ事件(大阪地裁判決 平成12年4月28日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:主任(支店)

●室長、班長の指揮監督下にあり、一般職位の部下はいなかった。

●出退勤は記録によって管理されていた。

●業務も室長、班長の指揮監督下で行っており、経営者と一体的な立場にある者とはいえなかった。

日本コンベンションサービス事件(大阪高裁判決 平成12年6月30日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:参事、係長、係長補佐等のマネージャー職(支店)

●役職手当を受け、タイムカードによる打刻をしなくてもよく、それぞれの課や支店で責任者としての地位にあったが、他の従業員と同様の業務に従事していた。

●出退勤の自由はなく、時間配分が個人の裁量に任されていたとはいえなかった。

マハラジャ事件  (東京地裁判決 平成12年12月22日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:インド料理店の店長

● 店長としての管理業務にとどまらず、店員と同様の接客及び掃除等の業務が大部分を占めていた。

● 店員の採用権限及び労働条件の決定権限がなかった。

● 店舗の営業時間に拘束されており、出退勤の際に必ずタイムカードを打刻しており、継続的に出退勤管理を受けていた。

● 月々の給与において、役職手当等の管理職の地位に応じた手当が支給されたことはなかった。

風月荘事件  (大阪地裁判決 平成13年3月26日)

争点:時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:喫茶店及びカラオケ店の店長

● 会社の営業方針や重要事項の決定に参画する権限が認められていたわけではなく、店舗の人事権も有していなかった。

● タイムカードの打刻や勤務予定表の提出が義務付けられていた。

● 残業手当が支給されていた時期があった。日常の就労状況が査定の対象とされていた。

東建ジオテック事件  東京地裁平成14年3月28日  

争点:時間外労働及び深夜労働、休日労働に対する割増賃金支払義務の在否

地位:地質調査等を行う株式会社の係長、課長補佐、課長、次長、課長待遇調査役、次長待遇調査役等

●人事評価に関与、支店の幹部会議、管理職会議に出席していたが、経営方針に関する意思決定に直接的に関与していたとかとはいえなかた。

●係長以上の者はタイムカードによる厳格な勤怠管理はしないものの、社内文書で遅刻・早退は慎むべきものと示達がされていた。

●主任以下の者と同様に勤務時間が定められ、現実に支店長らが視認する方法による勤怠管理の下に置かれており、勤務時間が自由裁量に委ねられていたとはいえなかった。

育英舎事件  (札幌地裁判決 平成14年4月18日)

争点:時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:学習塾の営業課長

● 人事管理を含めた運営に関する管理業務全般の事務を担当していたが、裁量的な権限が認められていなかった。

● 出退勤について、タイムカードへの記録が求められ、他の従業員と同様に勤怠管理が行われていた。

● 給与等の待遇も一般従業員と比較してそれほど高いとはいえなかった。

リゾートトラスト事件(大阪地裁判決 平成17年3月25日)

争点:時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:係長(支店)

●日常的な経理事務処理を担当しており、労働時間等の規制の枠を超えて活動することが当然とされるような職務内容ではなかった。

●出勤簿と朝礼時の確認により一応の勤怠管理を受けており、自由裁量があったとは認められなかった。

●手当が「時間外勤務手当相当分として」支給されることが就業規則上明記されていた。

アクト事件  (東京地裁判決 平成18年8月7日)

争点:時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金支払義務の存否

地位:飲食店のマネージャー

● アルバイト従業員の採用等について決定権を持つ店長を補佐していたに留まり、部下の査定の決定権限もなかった。

● 勤務時間に裁量はなく、アルバイト従業員と同様の接客や清掃も行っていた。

● 基本給は厚遇されておらず、役職手当等の諸手当も十分とはいえなかった。

以下は諸々の請求に対し管理監督者性を否定した判例

岡部製作所事件  東京地栽判決平成18年5月26

地位:営業開発部長

東京地裁は、Xは部長という肩書を持ち、管理職手当の支給等の管理職としての待遇を受けてはいたが、常時管理する部下がいるわけでなく、専門職的立場であったことなど、実際の就労事情から管理監督者性を否定。

エイテイズ事件  (神戸地尼崎支判決平成20年3月27日)

地位:衣料品会社を退職した元技術課課長

現場のいわば職長という立場にすぎず、その具体的な職務内容、権限及び責任などに照らし、管理監督者性を否定。

バズ(美容室副店長)事件 (東京地栽判決平成平成20年4月22日)

地位:美容室を営む会社の元副店長

管理監督者性について、Xは、Yの経営・人事・労務管理等に副店長としてある程度関与していたといえるもののその関与は限定的であり、副店長としての処遇といえるほどの処遇も受けておらず、また、仕事に裁量性は認められるものの経営・人事・労務管理等へ関与は限定的で、格別の金銭的処遇を受けていたわけでもないとして管理監督者性を否定。

エス・エー・ディー情報システムズ事件  (東京地栽判決平成23年3月9日)

地位:ソフトウェア、情報提供サービス会社の元従業員

管理監督者該当性について、Xは、品質管理・進捗管理という重要な役割を期待されており、また、他の従業員に比して厚遇を受けていたということはできるが、これらの事情を総合考慮してもなおXが管理監督者を否定。